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◆てれび・しんぶん論

222.だからダメなんだよ、NHKは

NHKが“自画自賛”してやまない番組に、『プラネットアース』なるドキュメンタリー・シリーズが。たびたび、再放送を繰り返しているが、その謳い文句は、『誰もみたことのない地球の素顔を極上の映像で描く。NHKとBBCが五年の歳月をかけて撮影・制作した大型自然ドキュメンタリー』。シリーズ全てを観たわけではないが、確かにその映像は圧巻の一言。感心することしきり。といいつつ、今回はこの番組(とNHKの資質)にイチャモンを。
ターゲットは、第5集「高山 天空の闘い」。この中で、ヒマラヤ越えを企てる、世界最小のツル、「アネハヅル」の集団飛翔シーンが紹介される。数百羽単位の群れが、6000m超級の峰々を“果敢に”越えるシーンはまさに圧巻。インド、中国、東南アジアあたりで越冬するためだそうだが、なんで無理してそんな高いところを?というのは人間の感覚にすぎない。彼らにとっては、「無理」なことではなく「自然」なことなんだろう。「果敢に」という表現も然り。彼らにとっては、ごく「当たり前」のことのハズ。
“アネハ”は「姉葉」。しかしながらどうしても「姉歯(元一級建築士)」を連想してしまうから、そういう点ではツキのないツルかもしれないが、実際、その集団の中には“ツキ”がないヤツが。途中、一羽の個体が2羽のイヌワシに襲われて餌食となる。
問題はその時のナレーション。最悪&最低。イヌワシに捕獲されたシーンが流れた直後、飛翔を続ける群れのシーンが。その映像に被せてこうナレーション。「かわいそうですが、仲間たちにはどうすることもできません」。わざとらしさたっぷりで感傷的なオンナの声。これで全てがブチ壊しに。超一級・超弩級・超ド迫力の映像も大仰なテーマも、さらには多くのスタッフ&関係者の(御)努力も、さらには(御)出演下さったアネハヅルやイヌワシがまさに“命がけ”で“演じて”くれた“大自然ドラマ”もがだ。
端的にいえば、感傷など無用なのだ。その感傷自体、人間(ごとき)の些末な価値観&御都合主義に基づくものにすぎないからだ。先述した「無理」「果敢に」という感覚も同じなら、「ツキがない」と思う感覚も同じ。非・自然にして主観が過ぎよう。大自然をテーマ&被写体にするのなら、本来は、透徹たる『(大)自然観』と「生命」に対する冷徹なる『哲学』を基盤に据えてから、超然と向き合うべし!なのである。ましてや、“天下の”NHK&BBCが、膨大な金と日数と労力をかけるのならなおさらのこと。そんな気構え、微塵もないということを明解に示したのが、「かわいそうですが、仲間たちにはどうすることもできません」なるナレーションだった。ヘドが出るような「甘さ」は、一種の視聴者迎合主義の表れであると同時に、ある意味、視聴者を小馬鹿にしたものでもある。これぞNHKの宿痾的体質ナリ。
だいたい、イヌワシに捕獲された仲間に対し、他の仲間たちが、「どうにかしよう」などと思うわけがない。逆に「ああヨカッタ!オレ(ワタシ)がヤラれなくて」と胸をなでおろしているかもしれないのだ(コッチのほうがまだ共感を持つね、ワタクシは)。仮に、先のナレーションがその線だったらどうだったか。すなわち、「運に見放された一羽のツルがイヌワシにヤラれたため、他のツルたちは安心して越冬地へ向かうことができ、その喜びがエネルギーになって、ヒマラヤ越えもなんのその!」。違和感ムキムキだろうが(アホな視聴者連からは非難轟々だろうが)、本質的にその違和感、先のナレーションにも全く同様、感じるべきなんである。
かなり以前、当ブログのパート1で『No.60 チーターとトムソンガゼル(『客観』とはげに難しきもの也)』(2004年12月25日付け)なる記事を。当時、NHKが放映していた「地球!ふしぎ大自然」なる番組をオチョくったものだが、お暇でしたらお目を通して下さいませ。本記事と似たようなコト、記しているんだが、コッチの番組ならまだ許せるというもので。コッチは、デパ食あたりの“お子様ランチ”だからでアル。しかし、『プラネットアース』はちゃいまっせ。京都は「吉兆」あたりの懐石料理。素材は超一級。しかし、アジノモト使っていたら、どうなりますか?しかも、それが「当たり前」と思ってるに等しいんですぜ、NHKの感覚・感性は。だから、アンポンタン呼ばわりする我がおるわけで。オシマイ。

●追記 もしワタクシがこの番組をディレクションするんなら、『諦観』を基盤に構えるね。それが、『(大)自然』をちょこっとは表現しうる価値観(のひとつ)ゆえ。もっとも、ワタクシがヤッたら、完成するのは“来世”になるだろうけどさ。ワハハのハ。
by s_masuzawa | 2007-07-27 18:09 | ◆てれび・しんぶん論

●超天才 羽生で最後 違ってた


by s_masuzawa
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